《吉野》 奥村土牛

f:id:gernika:20160402211732j:image

春の吉野は、見渡すかぎりの全体が桜色に上気しているようで、匂い立っていて、色合いはおぼろげで。
何千本もの木が一斉に花咲かせているのに、奥ゆかしくて、どこか寂しげで。

その情景がまさにこの絵にありありと描かれていたものだから、土牛の技法は、何回も何回も水のように薄い色を重ねてゆくその技法は、この春の吉野山を描くためにあったんじゃないかと、そのような必然性を感じながら見ていた。

土牛の言葉も印象的。

   いざ制作している中(うち)に、何か荘厳の中に目頭が熱くなった。
   何か歴史画を描いて居る思いがした。

きっと、思いを込めながら、丹念に色を重ねていったのでしょう。
白寿にしてこの作品!

-------
奥村土牛―画業ひとすじ100年のあゆみ―」にて鑑賞。
このたびは、青い日記帳×山種美術館 ブロガー内覧会に参加し、館長の丁寧な解説や青い日記帳のTakさんの軽妙なトークを通して土牛作品にじっくりと向き合うことができ、貴重な機会をいただきました(御礼)。

今回の主役は《醍醐》の桜かもしれないけれど、あえて《吉野》。
でも好対照な趣(醍醐が"ますらお"で吉野は"たおやめ"といった感じ)でどちらも春の季節にふさわしいすばらしい作品。

f:id:gernika:20160402231502j:image
展示風景はこんな感じ(撮影許可を頂きました)。
《吉野》の前には腰掛けがあるので、座ってゆっくりと鑑賞することができます。

f:id:gernika:20160402232110j:image
展覧会にちなんだ特製和菓子
選ぶのも見るのも食べるのもいつも楽しみ
写真は《水のおもて》


山種美術館を訪れる度に、日本画への興味が増している気がする。