《バッカス》カラヴァッジョ

ウフィツィ美術館蔵バッカスローマ神話に登場するワインの神様もしもこの少年がバッカスではなかったらもしもこの少年が実は進んで我が身を捧げようとする生け贄で、その目の前にいるのがバッカスだったとしたらこの絵はなんて耽美で退廃的な熱を帯びている…

《吉野》 奥村土牛

山種美術館蔵春の吉野は、見渡すかぎりの全体が桜色に上気しているようで、匂い立っていて、色合いはおぼろげで。何千本もの木が一斉に花咲かせているのに、奥ゆかしくて、どこか寂しげで。その情景がまさにこの絵にありありと描かれていたものだから、土牛…

《ヴェールをかぶった女》 アンリ・マティス

メナード美術館蔵マティスの描く女性はいつも国籍不明の美しさを湛えている。そしてお洒落。彼女はシースルーのヴェールと衣服を大胆に着こなし、マティスはそれをさらりと描いてみせる。互いに自らのセンスを余すことなく発揮して。(2015年7月、日本経済新聞…

《画家の娘 マティス嬢の肖像》 アンリ・マティス

大原美術館蔵国立新美術館に大原美術館の絵がやってくることを知るなり、マティス嬢の絵も来るのかしら、きっと来るわよね!(ハアハア)と、一人でザワザワしながら、再会を待ち焦がれていた。よれた白目も、つぼめた口元も、帽子の影とハイライトも、少しエラの…

《髪》アマン・ジャン

大原美術館蔵今から10年以上も前のこと、大原美術館を初訪した時に、展示室に入るとすぐにこの絵が出迎えてくれたことをよく憶えている。その絵は、四角形じゃないというただそれだけで人目を引いていたし、乳房がぽろりとこぼれながらもちっとも恥ずかしげ…

《ベローナ》レンブラント・ファン・レイン

メトロポリタン美術館蔵レンブラントの人物画、好き。よくファッション雑誌の見出しで"こなれカジュアル"という表現が用いられるけれど、その言葉をちょいと拝借させていただくと、レンブラントの人物画はいわば"こなれフォーマル"なのである。この安定感よ…

《白いスイートピー》ヘレン・シャルフベック

ヘレン・シャルフベックフィンランドの女流画家最初は名前も知らなくて、ポスターだけ見てもあまり心惹かれなくて一度は見送ったものの、近しき芸術愛好者達が口を揃えてその作品を賞賛していたものだから、見逃したことに後ろ髪引かれる思いで過ごしていた…